ぞうごの会

ステップアップを目指す勉強会・懇親会@上海

#56 「STRAC お金の流れ」

 出席者 5名

 テーマ 「STRAC お金の流れ」

     「上海文具愛好会」

 

 

「STRAC お金の流れ」

 プレゼン資料(https://speakerdeck.com/zaowu/56-strac-ojin-falseliu-re

 

#56「STRAC お金の流れ」

 

  

 今回のぞうごの会では、許可を頂いてお世話になっている工場の経営改善策を紹介させて頂きました。工場は松江区あり、お客様はローカル系企業半分、日系企業半分になります。

 

  

 この会社のテーマは、経営改善と会社発展の為の具体的な活動内容を明確にすること。

  勿論、その活動を数値化することも忘れてはいけません。

 

  

 では、このテーマに対して何をしましょう?

  

 

 経営課題を見つけるのには様々な手法があるかと思います。例えば、財務諸表を読み解くのもその一つでしょう。ただこの会社では、それをするのに少々問題がありました。経費関係をほぼ税理士へ任せていましたので、社内に記録が残っていません。また税理士では、正式な発票しか取り扱いませんので、それ以外(例えば收据)の出入りについては、記録されていません。その為、財務諸表類を取り寄せても、大分欠損した内容しか確認出来なかったのです。

 

 社内に財務・経理の専門要員を置き、日々の記録を行い、定期的に経営数字の分析も出てくるのであれば、それが理想かと思います。しかし、そういった専門要員は、かなり高額の給与が必要になりますし、信頼出来る人材が即採用出来るとも限りません。そもそも10名足らずの町工場では、そこまでの余裕も無いと言うのが正直なところです。

  

 今回紹介させて頂いたのは、日々の出入りを記録してさえいれば、経営状況と改善課題が分かるSTRAC表という図になります。

  

 数値がしっかりしていなければ、何もなりませんので、日々の”記録”は絶対です。発票、收据、など伝票の種類に関わらず記録を取ります。記録は、エクセルで十分です。エクセルでの表作成方法等は、別の機会に勉強会を開いても良いかもしれませんね。

 

 さて、STRAC表についです。

 

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 STRAC表は、西純一郎氏が提唱されている戦略会計(STRAC会計)の中心に有るツールになります。このSTRAC会計は、「脱☆ドンブリ経営」(著:和仁達也, ダイヤモンド社, 2005年)で知りました。《現在は同タイトルは絶版になっており、リフレッシュ版として「お金の流れが一目でわかる! 超★ドンブリ経営のすすめ」が出ています。》このSTRAC表は、記録を元に作成することで、簡単に直感的に会社の経営状況が分かります。その上、経営改善の為の具体策を出す事も出来てしまうのです。日々の仕事でいっぱいいっぱいの経営者の方がおられれば、この書籍は本当にオススメです。

 *1

 

  STRAC表で使われるキーワードは以下になります。

 

  • 売上 - 変動費 = 粗利
  •  粗利 - 固定費 = 利益
  • 固定費 = 人件費 + その他固定費
  • 粗利率 = 粗利 ÷ 売上
  • 労働分配率 = 人件費 ÷ 粗利 

 

 財務経理を勉強した事の無い方でも、聞いた事のある言葉ばかりではないでしょうか。記録された数字を、これら項目に分けて、STRAC表に入力して行きます。STRAC表の図については、発表資料をご参照下さい。社歴が何年も有る会社であれば、一年分の記録で作成します。ただ、松江の会社は4月に工場移転があり、家賃等の金額が大きく変わったので、移管が終わり生産が安定した6月〜11月で作成しました。出席者の中には、既にSTRAC表を採用している方がおられ、毎月作成し変化を見られているようです。柔軟性を持って使えるようです。それよりも継続が大切ですね。

 

  

 勉強会でSTRAC表について説明を考える時、変動費と固定費の定義をどうするかが難題でした。この定義の仕方で、分析の結果も変わり、改善策の具体的な内容や目標も変わります。色々と考えたあげく、二つの説明をすることにしました。一つは会社の価値から考えることで、もう一つは数値的財務的な内容で考えました。

 

  

 変動費は、いわゆる原材料や副資材等で、売上の上昇に比例して変化する費用のことです。固定費は、その反対で人件費や家賃、水道電気代など、毎月同じ様に掛かる費用です。確かにその通りなのですが、この説明は自分の腹に落ちて来ませんでした。そこで、STRAC表を見ながら試行錯誤して出て来たのが、「固定費=会社の価値」という考え方でした。変動費(材料・副資材)は、既に市場にあり価値を持っています。固定費は、全て自社内の費用です。人材の質(人件費・教育費)、立地場所(家賃)、技術力(パテント費)等の自社内の費用は、会社そのものの価値ではないでしょうか。変動費は外から来るもので、その費用等は外に依存する必要があり、固定費は内のもので自社内でコントロール出来る。会社の価値を上下させる=固定費をどのように考えるか。例えば、今回紹介した松江の工場の企業価値は、「中国材を使い安定した製品を作り提供する」ことになります。中国材の選別(コストダウン)や人材の教育(安定生産)にも意味が出て来ました。

 

  

 数値を扱う時に心がこもっていないと、活動内容がぞんざいになります。意味付けが出来る事で、活動に張り合いが出来、結果にも結びつきます。メーカーだと、このような考え方になるのですが、他の業種だとどうなのでしょう。これも勉強会の新しい課題になりますね。

 

 

 日々数値を記録していると、色々な経費項目を固定費と変動費の何れかに分けるかで迷います。どう分解したものか?決めかねぬまま記録は続けて行きました。例えば、残業代は固定費でしょうか変動費でしょうか?生産の変動(売上の変動)によって光熱費が大きく変動する場合は、これは変動費という事でしょうか?こういった質問が頭の中をグルグル回り続けていました。

 

 

 

 実際には、決めなくてはいけない段階(STRAC表を作る段階)に入って、ネットで引きました。すると、この質問には、2つの質問が適切なことが分かりました。

 

 

  •  売上の変動に比例して影響の有る費用ですか?
  •  通年を通して変動の差異は大きいですか?

 

 

 例えば、光熱費が、売上の変動に比例して上下するけれど、通年を通しての変動は余り大きくはない場合は、固定費に分けると行った具合です。ファックスDMなどを多用する会社等は、通信基本料金は固定費、通信費用は変動費なんて分け方でもいいわけです。ここら辺は、感覚的なもので構わないと思うのですが如何でしょうか。

 

 

 

 ここまで来ると後は、STRAC表による分析を行ない、課題を抽出して行くだけです。具体的な項目は、発表資料をご参照下さい。大枠では以下の様なものが出て来ます。

 

  • 適切な売上目標の設定
  • 優先的に削減すべき費用項目の抽出
  • 費用削減項目の目標数値設定

 

  これら項目の数値を継続的に見ながら、具体的に日々の作業の中で改善を進めて行きます。

 

  次回以降で、具体的な改善結果を数字を交えて紹介させて頂きます^^

 

 

「上海文具愛好会」 第一回目

 

 ぞうごの会主催者でもある中北さんが、上海文具愛好会を立ち上げました。その第一回目をぞうごの会の第2部として17時より開催しました。詳細は、「上海文具愛好会ブログ」をご参照下さい。(http://ameblo.jp/shanghai-bunguaikoukai/entry-11731622996.html

 

 今回は「ペン」の会でしたが、各自思い思い主張を展開しかなり盛り上りました^^  出席者の中には、文具開発に携わった事の有る方もおられ、開発裏話なども!?聞けましたよ。

 

*1:

 脱★ドンブリ経営 図を描くだけでお金の悩みが消えていく!

キャッシュフローを、簡単な作業でビジュアルに把握できる手法(STRAC法)を解説する一冊。豊富な具体例とやさしい表現で、財務知識がなくても分かるような構成になっている。決算書や経理書の数値の持つ意味を理解し、現在の経営状況を知ることで経営の判断基準を持つことを主眼にしている。


(日経ベンチャー 2005/10/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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