ぞうごの会

ステップアップを目指す勉強会・懇親会@上海

Factory Tour:東莞某成型メーカー[by 中北、佐藤]

訪問日:2010年10月16日
創業日:2003年
総経理:藤北総経理様(仮称)

*補足
今回の工場見学は、クオリティーマインドの林様の「原田式工場経営勉強会」の企画になります。
林氏は、東莞南城区を拠点に品質改善・経営革新コンサルタントを行っています。伝説の経営者と言われる原田則夫氏と交流があり、原田氏逝去後も原田式経営哲学の伝道に注力されております。以下、運営サイトの一部を掲載しておきます。
クオリティーマインドのサイト:http://www.quality-mind.com/
原田式工場経営のサイト:http://quality-mind.seesaa.net/



 「3年先の夢、2年先の希望、1年先の実施。」
 藤北総経理が、工場見学の最後に設けられた交流会で3度4度と口にしていた。総経理の常に先に先にという精神は、この言葉にしてみても、工場見学を通しての説明にも、非常に強く感じることが出来た。

 工場見学は、「圧倒されてしまった。」の一言に尽きる。工場内は整然とした空気が充満していて、隅々まで5Sが行き届いていた。総経理は、「特別なことはやっていませんよ。」と言う。たしかに、やられている事の多くは、工場管理の本にも出てくるようなことが多かったように思う。しかし、出来ないからこうやって工場見学に来させて頂いているわけで、やはり特別だと感じてしまった。

 従業員数500名、顧客数200社、売上げは毎年前年比150%UP、ここでは「育て上げた」と言う言葉が相応しいと思う。「会社=人」の方程式。人の現調化か無しではなしえなかったし、現調化には教育は必須だ。人の現調化に当たり、総経理は次のような話をしてくれた。「最初の2年は、全て細かく指示を出していた。次の2年は、指示を半分にし、残りの半分は提案を募る。そして、5年目からは、全てについて提案を出して貰える様にする。」ここでも、冒頭に挙げた言葉が見え隠れしている。3年後の会社にどんな夢を持つのか、それを実施する為には、誰が何を勉強し、身につけ、出来るようになっていなければならないのか。これを一つ一つ、一人一人繰り返し会社を組み立て来た結果が、今のこの某成型メーカーになる。因みに工場長は、30代の中国ローカルスタッフである。

 例えば、工程管理は次のような具合だ。考えられる不良要因は分析されており、設計段階から、製造、メンテナンスなどを通してしっかりと管理されている。金型メンテナンスを例に挙げると、保管温度管理、ショット数管理、メンテ条件管理、作業手順、そして人員の教育、色々と管理項目が有るのだが、その一つ一つが一貫して徹底的に管理されている。一貫して徹底されているのは他にもある。省スペース化プロジェクトで空いたスペースは、その他のものを置かせない(必要に迫られる場合には、総経理決済が必要とのこと)。初期検査で不良ゼロの製品は、以降パトロール検査のみで出荷検査はしない(客先PPM一桁管理)。その他にも、バーコード管理、(混入や数量の過不足、先入先出)、ポカよけの数々、電気の消費、等など。藤北総経理は、色々と見学ポイントを足早に説明されるのだが、その都度圧倒されていた。

 何かをやるには費用が掛かる。次に紹介して置きたいのは、総経理の話には、かならずコストの話が出て行くるという事だ。日本と比較して、中国の工場に掛けられる金額は低い。その為、工場では出来る限り安価な方法で最大の効果を得られるように工夫されていた。例えば、明り取りのある屋根をもつ工場は昼間の電気代が不要、冷却効果の高いエアコンの採用、自動機の内製化、省スペース化。社内報の発行は、低コストのわりに、低離職率や人員採用に貢献していると言う。効果がでる費用は出す。しかし、全体では必ず利益に転換する。総経理には、そう言った徹底した姿勢があると思えた。

 最後にもう一つ、従業員の笑顔が綺麗なことにびっくり!工場見学のメンバーが通るとニッコリ笑顔と挨拶をくれる。守衛さんにも徹底されている。会社に到着すると、「工場見学の方ですね。此方へどうぞ(もちろん、中国語。)」とニッコリ笑顔で会場まで案内して頂けた。その理由を社風紹介用DVDに見ることが出来た。その内容は、社内イベント(運動会など)、教育風景(総経理自ら社員研修)、全室クーラー付の寮等の福利厚生部分と会社の紹介。内容も良いのだが、その使い方に工夫があった。このDVD会社宣伝用には違いない。けれどその対象は顧客ではなく、新入社員や従業員家族なのだ。このDVDは、従業員作成の定期社内報と一緒に全従業員の家族に送られるそうだ。そうすることで、従業員や家族ともども安心して働いて貰えることを意図している。

「モノ造りは、ヒト造り。」小職初めて「本当のモノ造り」を見た様な気がした。